保険契約に関してのさまざまな問題

Q.
先日、不意の事故に合い治療で病院に通院しました。その際、加入している保険では治療費が下りないと言われました。保険契約に関して注意する点は何なのでしょうか?(福岡市・40代・男性)


A.
1 ゼロか百の世界

たとえば、傷害保険に加入していて、事故にあう。約款には「急激かつ偶然な外来の事故」の場合、保険金を請求すれば払ってもらえるはず…。ところが、保険会社から「本件は、○○○○より、保険金をお支払いすることは出来ません」と、支払義務はないとの回答を得た場合、あなたならどうしますか?

公表された判例の中には保険会社が支払を拒絶し訴訟になり、裁判の結果、支払を命ぜられる事案を見かけることがあります。保険会社から前記のような対応を受けた場合に、「ああ、そうなのか」と思うのか、「いや、ちょっと待てよ」と思うかで、結論が大きく変わってくるわけです。

ふと疑問に思い、それを行動にうつした場合にだけ「保険金が下りる」という可能性への扉が開かれるわけです。まさに、ゼロか百か、の世界です。
この手の事案を散見する度に、一体どれほどの事件が眠ったまま処理されてしまっているのか、と考えてしまいます。ゼロか百か、なわけですから、百がどれだけ眠っているんだろうと思うのです。



2 保険会社の担当者が知らない場合も

もちろん、保険会社が請求をごまかしているとか、適当に処理しているとか、そういうことを言っているのではありません。
判決で請求が認められた事案の多くは、保険契約の約款の解釈の問題であったり、立証責任が問題であったり、事実の当てはめ方が問題であったり、あるいは、それまで問題にされたことすらないようなことが問題だったりします。普通は、そもそも問題点にすら気づくことはなく、また問題点への理解もそうそうできないはず。そういう意味では、保険会社の担当者ですら、知らない問題をはらんでいるかも知れないのです。



3 立ち止まり、考える瞬間が大切

自分がどんな保険に入っていて、どのような場合にどのような保険金が下りるのか、約款を読んでもすぐにピンとはこない。それが普通です。難しく書いてあればその意味内容がよく分からず、逆に意外にあっさりしているが故に具体的事案をあてはめることが困難だったりもします。

そのような場合に、保険のプロである担当者から、「これは、○○○○によ り、出せないんです」と断言されれば、そういうもんか、と頭から思いこんでしまいがちでしょう。
しかし、判例を見る限り、そうではない。私自身も『ゼロか百か』で、『百』の経験があります。保険会社からの事前の回答は、適用外なので払えない、すなわちゼロ円との回答でした。しかし、あきらめずに訴訟を経ることで、最終的には数千万円もらって解決することが出来たのです。
保険は難しい。だからこそ「いや、ちょっと待てよ…」と、ふと立ち止まれるかどうか、そのときにきちんと法律の専門家である弁護士に相談するか否か、そこに、「百」への扉が開かれる可能性があるのだと思います。

福岡 弁護士 | 奥田二子石法律事務所 奥田竜子