弁護士キャリア10年の思い

私が弁護士になって早や10年が過ぎ、たくさんの事件、そして多くの人々に出会い、関わらせていただきました。それぞれにさまざまな背景を抱え、私にとっては思い出深い事件ばかりです。
今回はそうした事件の中からいくつかをご紹介いたします。遠いようで、皆さんの身近にある法律のトラブル。ご参考になれば幸いです。

◎『離婚事件』
人として気づかされることも
私自身が女性だからか、離婚や子供を巡る事件を担当することが多いですね。男女を問わず、離婚を請求する側、される側、子供を育てている側、いない側、いずれにも相当数関わりました。離婚を選択せざるを得ない一方、当事者の将来に対する途方もない不安感は、『分からない』ということによって増幅するように思います。ですから、まず離婚による利益、不利益を知ることや、それを前提としたシミュレーションは大切です。何より、さまざまなものや気持ちの整理には一定の時間が必要であるように思います。
また、離れて暮らす親子の愛惜の深さにも数多くふれ、弁護士としてだけでなく、人として気づかされることも多くありました。

◎『相続』
相談者の精神的疲労が大きい
親族間の財産を巡る争いは、些細なことが許せず、激化しやすく、精神的な疲弊の度合いが相当強い事件で、客観的な視点や法的枠組がより重要になります。予防という観点からは、遺言を活用して、死後の紛争を回避できた事件もありました。

◎『交通事故』
ある日突然当事者に
誰もが不意に当事者の立場に立たされてしまう可能性がありますよね。治療や相手方との交渉等で分からないまま時が経つことに不安がつきまとうものですが、相当件数が多く、それ故、ある程度過去の事例が集積されていますからそう心配はいりません。

◎『多重債務事件』
一人で悩まずにまず相談
一体いつになったらここから逃れることができるのか…と思い悩み、周囲に隠していたり、終わりが見えなかったりすることで、精神的に追いつめられている方が多い事件です。法的に整理し、終了時期やそれまでになすべきことを明確にするだけで、救われるようです

◎『刑事事件』
信頼関係が重要
弁護人として、事件当事者や親族にかわって被害者に謝罪したり、検察官等と面談し、処分に対し意見を述べたり、また、法廷で弁護することもありました。逆に被害者側に立って、加害者を告訴したり、損害賠償請求をしたりすることもありました。九年ほど前に携わった少年事件では、担当するうちに密な信頼関係が生まれ、今では立派に母親になったその時の当事者から定期的にうれしい近況報告をもらったりもします。彼女に出会えてよかったな、と心から思う弁護士としての幸福を感じる瞬間です。

◎雑感
私にとって弁護士という仕事の一番の魅力は、依頼者がどんな立場であれ、彼あるいは彼女の側により添い、理解し、味方になることができる点です。一緒にその難局を切り開き、乗り切り、次の一歩を踏み出すお手伝いができるなんて本当に幸せなことです。
ですから、私は、依頼者の地位や、立場にこだわったり、偏ったりすることのない弁護士でありたいと常に思います。そうすることで、依頼者の気持ちを軸に据えつつ、相手の気持ちにも思いをはせることができ、事件を柔軟に考えることができると思えるからです。事件に携わることで、私自身も成長でき、また、それを次の依頼者に還元できれば幸いです。

奥田・二子石法律事務所 弁護士 奥田竜子


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